始まらなかった恋

俺と山岡が付き合いだしても、俺が山岡を前から好きだったなんて友達に言っていなかったから、
「手近なとこでうまくやったよな～」
なんて言われた。
「木村はちょっと俺達には手が出せないレベルだもんな」
なんてことを言った失礼な奴もいた。
木村では無理でも、山岡なら付き合ってもらえそう…そんな風に言われて腹が立った。
「山岡はいい子だから傷つけること言わないで欲しい」
あまり感情を出さないよう気をつけながら注意した。
俺が山岡に惚れてるなんてバレたらもっと邪魔してきそうだったから。

ラインの会話だけは二人きりの世界。
好きな映画を聞いた時は、映画に誘おうと思っていた。
でも、山岡は今時女子が好きそうな漫画原作の恋愛ものを好むと知った……一緒に観ることは無理だ、寝てしまう。
デート中に寝てしまうなんて最悪だ。
デートに誘えないでいるあいだに友達との約束が決まってしまう。それは男女数人でというもので山岡も一緒だけど、結局は友達と遊ぶ休日ということになってしまっていた。
男友達は俺達の邪魔をするだけが目的ではなく、きっと木村のことを狙っているのだと思う。
でも易々と告白できるレベルではないからなるべく一緒にいる時間を増やして…と思っているのだろう。
山岡はみんなと一緒でも「二人がいい」とは言わない。
もしかしたら、俺と二人きりになるより木村と一緒の方が安心しているのかもしれない。
俺と二人きりを避けているのかも…