冗談はどこまで許される?
冗談はどこまで許される?Ⅱ
彼に抱きしめられながら私はアタフタ。
目をキョロキョロさせ顔を左右に意味もなく動かしたりして。
「俺、お前が俺以外の奴と付き合うなんて嫌だって…そう思ってたんだ。
でも、あんな悪戯した俺が 告白するなんて出来なくてさ」
「は?」
彼は私を好きだったって事!? はぁ!?
確かにいつも何かと一緒に居たし、お互いの部屋を行き来する関係をずっと続けてきた。
「だから、お前から告白されて、本当に嬉しい」
彼の腕の力が増す。
すごい密着度なんですけど!? こんな距離感は初めてで赤面してしまう。
でも…。
「今日ってエイプリルフール…」
私はポツリと呟く。
すると彼はバッと離れて、私を凝視した。
「あ…今日って4月1日だっけ…」
茫然といった表情。
私は彼からの言葉を信じられなかった。
今年もまたからかわれているだけなのではないか?と…。
でも彼のこの表情は…冗談じゃないの?
「あの…」
「うわマジか~…あ゛~ごめん」
彼は項垂れた。
キスした事を謝ってる?
「本気だったの?」
私は彼に訊く。
「…今日は何を言っても嘘だと思うんだろ? じゃあ、今日は言わない」
「いつ聞いても答えは一緒だよ」
「…お前の告白は冗談なんだよな?」
「冗談ていうか…」
エイプリルフールの冗談で告白しようと思った。
去年、私がどんな気持ちになったか少しは考えて欲しくて。
冗談というより、復讐心だった。
「気を遣ってくれるのか? いいよ、ハッキリ冗談だって言ってくれて。
でも、ごめん…キスしちゃったな…」
と項垂れる彼。
彼の気持ちは本物って事? 嘘でしょ?
でも、いくらなんでも冗談でキスはしない…?
「私…絶対に幼馴染としてしか見てもらえてないって思ってて。
だから、好きだなんて言えないし、いつか違う人の事を好きになっていくんだって思ってた…」
「好きだって言えないって…どういう意味?」
「ずっと好きだったよ…」
「それってマジで?」
「でも諦めた」
「去年の俺の悪戯のせい?」
私は頷く。
「そっか…」
「諦めた時からもう1年だよ」
1年もずっと彼以外を好きになれるだろうか?と もがいてきた。
「1年前、俺があんな悪戯をしなければ…」
彼は後悔してくれていると思う。
だけど…私の悲しみはそんなものではなかった。
でも、私も去年の彼と同じだよね。
彼に冗談で告白をしたんだもの。
「私も同じ事したんだから…もう責められないよね。 ごめん」
「いや、それは俺があんな悪戯したから お前も同じ事しただけだし…」
「ううん。 私も最低だよ。 ごめんね。 じゃあ、帰るね」
「え、話終わり?」
「うん。 お互い後悔や反省は一人でしよう」
「でもっ お互い好き合ってるって事でいいんじゃないか?」
彼が私の手を握る。
…その手を見つめながら、全然心が動かない事を知った。
確かに彼に触れられてドキッとしてしまったけれど、それは男性に接触された経験が全く無かったから。
彼にもっと触れたい。とは思わない。
さっきのキスだってそう。
心がついていかない。
私は首を横に振り、
「好き合ってなんて無いよ。 私は多分、もう無条件で好きだって思ってた感情を取り戻すことはできない」
「え…」
「好きだった…好きだったんだよずっと。
でも、自分と同じ気持ちを返して欲しいだなんて思ってなかった。
ただ私だけが好きなだけで満足してたのに。
…まさか、悪戯なんかで私の気持ちを弄ばれるなんて想像もしてなかった」
「だから、それは…ごめん」
「あの日、あの時、私の恋心は砕け散った。
他に好きな人ができなかったから引きずってしまったと思う…でも、私達、別々の道を選んだほうが幸せになれる」
「なんで…」
「私は、きっといつか思うの。 捨てられる前に捨ててやろうとか、浮気されたら私もし返してやろうとか」
「なんだよそれ?」
「二人の関係性ってそんな感じじゃない? 甘えたりするより、突っかかってしまう関係」
「…かもしれないけど」
「私…去年の事がなければそこまで考えなかった。 告白してもらえたら嬉しいなって思えてた。
でも、今は違う、付き合いたいと思えない。 ううん、付き合いたくない」
「好きなのに付き合いたくない?」
「…好きでもないんだと思う。 悔しくて、傷つけたくて…そういうねじ曲がった感情しか無い」
ずっと好きだった。
その、ずっと という期間、温めた私の恋心を彼は心無い悪戯で踏みつぶした。
一度壊した物は元には戻らない。
接着剤でとめたって、ひびはなくならない。
私の心にひびが入った あの日。
あの日から彼への気持ちは温かなものでは無くなった。
こんなに嫌な気持ちを持っている相手と付き合うなんて私には出来ない。
私は温かな気持ちを持てる相手と恋したい。
彼に対する恨みを晴らすまで、次の恋へと進めなかった。
彼が私にした事と同じ事をしてやろうという小さな復讐心。
でも、その時は 彼は私の事なんてただの幼馴染としか思っていないのだから大した痛手にもならないだろうと思っていた。
それが思いがけず彼を傷つけてしまった。
去年の私と同じ思いを彼も受けているのか…そう思うと、悪い事をしたという思いはもちろんある。 でも、それは半分だけ。 いいきみ。と残酷にも思っている私は、絶対に彼と付き合う事は出来ない。
目をキョロキョロさせ顔を左右に意味もなく動かしたりして。
「俺、お前が俺以外の奴と付き合うなんて嫌だって…そう思ってたんだ。
でも、あんな悪戯した俺が 告白するなんて出来なくてさ」
「は?」
彼は私を好きだったって事!? はぁ!?
確かにいつも何かと一緒に居たし、お互いの部屋を行き来する関係をずっと続けてきた。
「だから、お前から告白されて、本当に嬉しい」
彼の腕の力が増す。
すごい密着度なんですけど!? こんな距離感は初めてで赤面してしまう。
でも…。
「今日ってエイプリルフール…」
私はポツリと呟く。
すると彼はバッと離れて、私を凝視した。
「あ…今日って4月1日だっけ…」
茫然といった表情。
私は彼からの言葉を信じられなかった。
今年もまたからかわれているだけなのではないか?と…。
でも彼のこの表情は…冗談じゃないの?
「あの…」
「うわマジか~…あ゛~ごめん」
彼は項垂れた。
キスした事を謝ってる?
「本気だったの?」
私は彼に訊く。
「…今日は何を言っても嘘だと思うんだろ? じゃあ、今日は言わない」
「いつ聞いても答えは一緒だよ」
「…お前の告白は冗談なんだよな?」
「冗談ていうか…」
エイプリルフールの冗談で告白しようと思った。
去年、私がどんな気持ちになったか少しは考えて欲しくて。
冗談というより、復讐心だった。
「気を遣ってくれるのか? いいよ、ハッキリ冗談だって言ってくれて。
でも、ごめん…キスしちゃったな…」
と項垂れる彼。
彼の気持ちは本物って事? 嘘でしょ?
でも、いくらなんでも冗談でキスはしない…?
「私…絶対に幼馴染としてしか見てもらえてないって思ってて。
だから、好きだなんて言えないし、いつか違う人の事を好きになっていくんだって思ってた…」
「好きだって言えないって…どういう意味?」
「ずっと好きだったよ…」
「それってマジで?」
「でも諦めた」
「去年の俺の悪戯のせい?」
私は頷く。
「そっか…」
「諦めた時からもう1年だよ」
1年もずっと彼以外を好きになれるだろうか?と もがいてきた。
「1年前、俺があんな悪戯をしなければ…」
彼は後悔してくれていると思う。
だけど…私の悲しみはそんなものではなかった。
でも、私も去年の彼と同じだよね。
彼に冗談で告白をしたんだもの。
「私も同じ事したんだから…もう責められないよね。 ごめん」
「いや、それは俺があんな悪戯したから お前も同じ事しただけだし…」
「ううん。 私も最低だよ。 ごめんね。 じゃあ、帰るね」
「え、話終わり?」
「うん。 お互い後悔や反省は一人でしよう」
「でもっ お互い好き合ってるって事でいいんじゃないか?」
彼が私の手を握る。
…その手を見つめながら、全然心が動かない事を知った。
確かに彼に触れられてドキッとしてしまったけれど、それは男性に接触された経験が全く無かったから。
彼にもっと触れたい。とは思わない。
さっきのキスだってそう。
心がついていかない。
私は首を横に振り、
「好き合ってなんて無いよ。 私は多分、もう無条件で好きだって思ってた感情を取り戻すことはできない」
「え…」
「好きだった…好きだったんだよずっと。
でも、自分と同じ気持ちを返して欲しいだなんて思ってなかった。
ただ私だけが好きなだけで満足してたのに。
…まさか、悪戯なんかで私の気持ちを弄ばれるなんて想像もしてなかった」
「だから、それは…ごめん」
「あの日、あの時、私の恋心は砕け散った。
他に好きな人ができなかったから引きずってしまったと思う…でも、私達、別々の道を選んだほうが幸せになれる」
「なんで…」
「私は、きっといつか思うの。 捨てられる前に捨ててやろうとか、浮気されたら私もし返してやろうとか」
「なんだよそれ?」
「二人の関係性ってそんな感じじゃない? 甘えたりするより、突っかかってしまう関係」
「…かもしれないけど」
「私…去年の事がなければそこまで考えなかった。 告白してもらえたら嬉しいなって思えてた。
でも、今は違う、付き合いたいと思えない。 ううん、付き合いたくない」
「好きなのに付き合いたくない?」
「…好きでもないんだと思う。 悔しくて、傷つけたくて…そういうねじ曲がった感情しか無い」
ずっと好きだった。
その、ずっと という期間、温めた私の恋心を彼は心無い悪戯で踏みつぶした。
一度壊した物は元には戻らない。
接着剤でとめたって、ひびはなくならない。
私の心にひびが入った あの日。
あの日から彼への気持ちは温かなものでは無くなった。
こんなに嫌な気持ちを持っている相手と付き合うなんて私には出来ない。
私は温かな気持ちを持てる相手と恋したい。
彼に対する恨みを晴らすまで、次の恋へと進めなかった。
彼が私にした事と同じ事をしてやろうという小さな復讐心。
でも、その時は 彼は私の事なんてただの幼馴染としか思っていないのだから大した痛手にもならないだろうと思っていた。
それが思いがけず彼を傷つけてしまった。
去年の私と同じ思いを彼も受けているのか…そう思うと、悪い事をしたという思いはもちろんある。 でも、それは半分だけ。 いいきみ。と残酷にも思っている私は、絶対に彼と付き合う事は出来ない。