*Only Princess*
てったとちゃんと話せないまま放課後になった。
先生があたしとてったの席にやって来た。
「霧山、まだ学校のこととかわかんないだろうから、高村に校舎を案内してもらえ」
「え、あたし!?」
「仲良いんだろ?」
「え、あ、はい!」
「じゃ、よろしくな」
校舎の案内役、か。
やっとゆっくり話せるじゃん!
美紗と別れ、てったのほうを向いた。
「じゃあ、案内するね!」
「ああ」
頷いたてったと並んで校舎を回り出す。
懐かしい。
自分の中の甘酸っぱい思い出が溢れ出してくるのを感じた。
なんでだろう?
長い時間離れていたのに、てったの隣は落ち着くの。
あたしは校舎案内をしながらも、あのときからの疑問をぶつけた。
「ねえ、あのときなんで引っ越したの?」
「……いろいろあってな」
「じゃあなんで、引っ越すこと教えてくれなかったの?」
「……」
あたしの質問に答えてくれないてった。
でもそのてったの表情が悲しげで苦しげに見えて、それ以上深く追求できなかった。