*Only Princess*
「ひぃぃ!」
心からの恐怖の声を出し、あたしは必死にその手から逃れようとする。
ああ、もうヤダ……!
なんでこんなハイクオリティーなの!?
若干泣きそうになっていると、2つの声が聞こえた。
「菜生。ちょっと落ち着きなって」
「そんなビックリすんなよ~。俺だよ、俺」
1つは美紗の声。
もう1つは……
「真幸……?」
吸血鬼の正体は真幸だった。
暗いし、バッチリメイクしてあるから全然わかんなかった……。
そういえば前に吸血鬼の格好してたもんね。
「真幸ったら、驚かさないでよ……」
「いや、驚かすのが俺らの仕事だって。それよりどう? カッコイイだろ〜?」
「嫌い。大ッ嫌い」
「ええっ!? なんだよそれ!?」
もうー!
無理やりお化け屋敷に入れた司も、驚かしてくる真幸も嫌いなんだからっ。
知り合いに会ったことで妙に冷静になったのか、あたしは美紗の手を取り駆け出した。
そしてあっという間に出口に出た。
明るい光に思わず目を細める。