*Only Princess*




「お前も早く着替えて来いよ」


「はぁーい」



再び生返事をしてから、猿の衣装を持って更衣室へ入った。


今さらどうこうできるわけじゃないから、大人しく着替える。


そしてメイク係の子にメイクしてもらう。


メイクって言っても、頬に真っ赤なチークを乗せるだけだけど。



「はぁ……」



鏡に写る自分を見るけど、ため息しか出てこない。


コンコン、と更衣室がノックされ、返事をするとてったが入ってきた。


と思ったら"ぶっ"と吹き出した。



「あーっ! 笑わないでよ!」


「わ、わりぃ……ふっ」



なんなの? 笑いに来たの!?


ひどいなー、と口を尖らせていると、てったは微笑を浮かべ近づいてきた。


そしてむぎゅっと頬をつねってきた。



「いたっ。はにふんのっ(なにすんのっ)」


「まあ……けっこー可愛いんじゃん?」


「……っ」



な、なにそれ……っ。

そんなこと言うの、ずるくない?


バカにしたように笑ってたくせに、"可愛い"だなんて……

たらし? 天然たらしなの? てったは。


周りにはクールで素っ気ないのに、あたしにはこういう意地悪してくる。


でもそれが、なんだか嬉しくもあるんだ。



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