*Only Princess*
「美紗のお母さん……」
少し複雑な顔をしたあたしには気づかず、にこにこと笑みを浮かべながら美紗のお母さんは近づいてきた。
「もしかして、放課後デートの途中だった? 美男美女でお似合いだわ」
「い、いや……そんなんじゃないですよ」
あたしもてったも苦笑いする。
このタイミングで美紗のお母さんに会いたくなかったかも。
なんだか気まずいもん。
美紗のお母さんは……美紗が暴走族に関わってるなんて、知らないよね、きっと。
「そうだ、菜生ちゃんに聞きたいことがあるの」
「何ですか?」
「最近の美紗、学校ではどんな感じかしら? なんか、元気ないように見えてねぇ……」
「……え?」
どういう、こと?
美紗のお母さんの言ってる意味がわからなくて、あたしはてったに目を向ける。
だけどてったもよくわかっていないようだった。
美紗は最近学校には来ていない。
でも美紗のお母さんは美紗は学校に行ってると思ってる。
てことは。
美紗は学校に行く時間に家を出て、放課後に家に帰ってるということ。
どこに行ってるかはわからないけど、きっと蛇王の倉庫にでも行っているんだろう。