*Only Princess*
「もしもし?」
『あ、菜生か?』
低くてちょっぴり甘い声が耳をくすぐる。
なんだか、いつもと声が違って聞こえる。
照れちゃうっていうか、ドキドキしちゃう。
「うん、どーしたの急に」
『いや、あのさ。旅行、行くんだよな?』
「うん、行くつもり!」
「一応伝えときたいことがあってさ」
伝えときたいこと?
なんだろう?
ていうか、真面目な話?
『琉依の父さんのホテル、実は”朱雀(すざく)”っていう族が支配してる地域にあるんだよ』
「朱雀?」
『そ。特に敵対してるわけでもねーんだけどさ、強い族だし何が起こるかわかんねーから』
そう、なんだ。
”朱雀”かぁ……。
聞いたことないけど、わざわざてったが忠告してくるくらいだもん。
相当強いんだろうね。
「わかった! 気をつけるね」
忠告に頷いた。