*Only Princess*
すると、ワンコールで電話は繋がった。
「あ、もしも……」
『おい、菜生! てめぇ今どこにいんだよ?』
ひぇぇ、やっぱ怒ってる〜。
「ごめーん……えーっとね、どこだろここ……」
周りにあまりお店がなくて、目印になるものがない。
しかも人も全然いないし。
外に出る出入り口くらいしか……。
「……ん?」
出入り口の向こう側から、誰かの声がする。
外に行けば、誰か教えてくれるかも……!
そう思ったあたしは出入り口の外へ飛び出した。
そこは、ショッピングモールの裏側だった。
えーっと人は……あ、いた!
……と思いきや、なんだか怪しい雰囲気。
もしかして、ケンカしてる?
それも殴り合いの。
男の人が3人いて、1対2っぽい。
2人で1人をいじめるなんて卑怯!
……なんて、そんなこと言えるわけない。
あたしはただ、柱の影から様子を伺うだけ。
すると、殴り合ってたが形勢は動いた。
1人のほうが見事なケリをかまし、2人は「覚えてろよ!」なんてありきたりな捨て台詞を言って去っていった。