*Only Princess*




「前にも聞いたけどさ、」


「ん?」


「今、菜生って好きなやついないの?」



──ドキン。



「……いるよっ」



……隣にね。

なんて言ったら、どんな顔をするんだろう?


てったは、なんでそんなこと聞くの?


あたしの好きな人のこと、気になってるってこと?


そんなの、期待しちゃうじゃん。

自惚れちゃうよ?




「そーゆーてったは、いるの? 好きな人」


「……いるよ」


「へ、へぇー」



ねえ、それって誰?


てったの好きな人、気になって気になってしょうがないんだよ。


冷静に聞いてるふりして、心はドキドキなんだよ。



「俺、さ」



てったがあたしのほうを向いて、あたしもてったを見上げる。


すっと頬に手が伸びてくる。


真剣な眼差し。

顔が、目が逸らせない。


まるで、2人だけの世界が生まれたような──。



< 263 / 422 >

この作品をシェア

pagetop