*Only Princess*
「そろそろ始まるみてーだぞ。……菜生?」
あたしの様子おかしかったのか、振り返ったてったが首をかしげた。
「……楽しみだね!」
なんでもないように、あたしは笑ってみせた。
てったにとってあたしは、”ただの幼なじみ”……?
今の距離は変えられないのかな?
……ううん、変えたい。
このまま想いを抑えて終わるだけなんて、嫌だよ。
あたしは、少し前にいるてったの横に行き、ぎゅっと手を握った。
「っ!」
てったが驚いたのが、顔を見なくてもわかった。
恥ずかしい。
けど、手を離されなかったことにが嬉しい。
「菜生……? どうかしたのか?」
「……ううん、なんでもない」
そう答えておいて、手を握る力を強くし、身を寄せた。
自分でもこんな積極的なあたし、知らない。
そんなあたしを、てったは受け入れてくれた。
今までも何度か生まれたことのある、2人だけの世界。
今は、”ただの幼なじみ”じゃない。
こんな時間がいつまでも続けばいいのに。