*Only Princess*
『一昨日、私がおつかいを頼んじゃって、その帰りに事故に巻き込まれたみたいなの』
一昨日、おつかい……。
あっ、俺が菜生をスーパーに送った日だ。
大きなケガはないと言っても、怖い思いをしたのには変わりない。
くそっ……俺が押し通してでも送ってけばよかった。
強い後悔の念に駆られる。
『今日は普通に学校に向かってるんだけど、まだショック状態が続いてるみたいで元気がないの。ほら、いつもは忘れないのにスマホも忘れちゃってるし』
あ……だから菜生のスマホから。
『だから、もしよかったら菜生の様子、見ててやってくれない? 送り出したのはいいものの、やっぱり心配で』
「はい、わかりました。俺がしっかり菜生を見てます」
菜生の母さんの心配を取り除くように、はっきりと答えた。
俺も心配だし、傍にいてやらないと。
電話越しで、菜生の母さんがふっと微笑むのがわかった。
『ありがとう。てったくんがいれば安心だわ。よろしくね』
再び「はい」と返事をしてから、電話は切れた。