*Only Princess*




『一昨日、私がおつかいを頼んじゃって、その帰りに事故に巻き込まれたみたいなの』



一昨日、おつかい……。


あっ、俺が菜生をスーパーに送った日だ。


大きなケガはないと言っても、怖い思いをしたのには変わりない。


くそっ……俺が押し通してでも送ってけばよかった。


強い後悔の念に駆られる。




『今日は普通に学校に向かってるんだけど、まだショック状態が続いてるみたいで元気がないの。ほら、いつもは忘れないのにスマホも忘れちゃってるし』



あ……だから菜生のスマホから。




『だから、もしよかったら菜生の様子、見ててやってくれない? 送り出したのはいいものの、やっぱり心配で』


「はい、わかりました。俺がしっかり菜生を見てます」



菜生の母さんの心配を取り除くように、はっきりと答えた。


俺も心配だし、傍にいてやらないと。


電話越しで、菜生の母さんがふっと微笑むのがわかった。



『ありがとう。てったくんがいれば安心だわ。よろしくね』



再び「はい」と返事をしてから、電話は切れた。



< 341 / 422 >

この作品をシェア

pagetop