*Only Princess*
冷たい空気が空いた心の穴を通り抜ける。
白い息を吐き、マフラーに顔をうずくめ、あたしは病院に向かった。
タカトはまだ退院できていない。
そりゃそうだよね。
まだ2週間しか経ってないし。
でもどういう治療をするのか、とかリハビリのこととか何も教えてもらってない。
あたしができることをしてあげなきゃ。
──コンコン。
「失礼します」
ドアをノックして病室に入ると、タカトと、リクとソウもいた。
「今日も来てくれたのか、菜生」
「うん、毎日来るよ」
「俺様に会いたいのはわかるが、それじゃ大変だろ」
「はいはい。……大丈夫だよ、あたしは」
事故に遭っても、タカトはタカトのままだった。
いや、少し変わったかもしれない。
あたしに元気がないことに気づいていて、明るく接してくれている。
自分のほうが辛いはずなのに。
だからあたしは傍にいることしかできない。
タカトが望むなら、そうするしかないよね。