*Only Princess*
エレベーターに乗って少し歩いて、そうして着いたのは屋上だった。
誰もいない静かな場所。
冷たい風が吹き抜けるけど、今はそんなこと気にしていられなかった。
流れる沈黙。交わらない視線。
あたしはそれが耐えきれなくて、口を開いた。
「……ねえ、さっきの話は本当なの?」
そう尋ねると、ゆっくりと視線をズラしたタカトと目が合わさる。
そして、深く頷いた。
「……ああ。俺の足はただの複雑骨折だよ。これから先にまったく支障はない」
あたしは重々しい息を吐いた。
まず最初に思ったのは、”よかった”ということ。
複雑骨折でも十分なケガだけど、これから先に支障はないと聞いて、心の底から安心した。
よかった……タカトの未来は奪っていなかったみたいで。
……ううん、あたしのせいでケガをしたのは間違いないんだから、安心してる場合じゃないよね。
あたしの責任はまったく変わらないんだから。