*Only Princess*
そんなあたしの心を察したのだろう。
「白鷹に戻りたいって思ったか?」
「そ、そんなこと……」
”ない”、とは言えなかった。
でもタカトに助けてもらったのは紛れもない事実だ。
自分勝手なことばかりは言えない。
だけどタカトなら、もしかしたら”戻っていい”と言ってくれると期待していた自分もいた。
「そうはさせねぇよ。朱雀からは抜けさせねぇ」
……期待は、あっけなく散った。
反抗はできなかった。
「やっと手に入れたんだ。そう簡単に手放してたまるかよ」
「タカト……」
「それでも戻りたいって言うなら……」
少し離れていたタカトが車椅子を押して近づいてきた。
「今まで集めた白鷹の情報を全国にバラまく。白鷹は強いから、いろんな族が狙ってるからな。そして俺らも奇襲をかける。……潰すつもりでな」
「そんなっ……!」
「それに加えてあいつらの過去もバラまいてもいいんだぞ。だいぶ波乱な人生を送ってるみたいだからな。かなり弱みになるはずだ。大変だよなぁ〜あいつらも。けっこうエグい過去で驚いて、」
──パンッ。
乾いた音が鳴った。
あたしが、タカトの頬に平手打ちした音。
我慢ができなかった。
どうしても。