*Only Princess*
『ねえ、菜生』
「ん?」
『窓の外見てみて』
「窓の外?」
言われた通り、窓を開けて外を見る。
するとそこには……厚いコートを着て立っている美紗の姿があった。
「えっ、美紗!?」
「えへへ、来ちゃった」
にへら、と笑い手を振る美紗の鼻は赤くなっていた。
今は9時過ぎ。しかも真冬の。
「い、今から下行くから待ってて!」
猛ダッシュで階段を駆け下りて、玄関を開けた。
「美紗! とりあえず上がって!」
「え、でもいいの? こんな夜遅いのに……」
「今さら何遠慮してるのっ。急なお泊まりとかしょっちゅうでしょ、お互い」
「そうだねっ。お邪魔しまーす」
一応、お母さんに美紗が来たことを報告し、美紗には先にあたしの部屋に行ってもらった。
温かいココアを入れている間、美紗のことを不思議に思う。
急にどうしたんだろう?
親とケンカした、とか、恋バナがしたいから、とかで急に来たことは今までもあったけど。
今日はそういうのじゃないと思う。
……ううん、話の内容はだいたいわかる気がする。
きっとあたしと白鷹のことだ。
心配して来てくれたんだよね。
その美紗の優しさ、受け入れよう。
あたしは湯気が立っているココアを両手に、あたしの部屋に向かった。