*Only Princess*
────ガラッ。
ちょっと乱暴に開かれたドア。
そこから入ってくる男子を見て、あたしは息を呑んだ。
彼が教壇に上がるまで、スローモーションに見えた。
あたしと同じような茶髪で猫っ毛
端正な顔立ち
長身でスラッとしたスタイル
「え、ちょっとちょっと。かっこよくない!?」
騒ぐ女子たち。
美紗もあたしに何か言ってるようだったけど、あたしの耳にはまったく入ってこなかった。
前に立つ、突っかかりにくいオーラを放つ男子に釘付け。
その男子はゆっくりと口を開いた。
「……霧山 哲太(きりやま てつた)です。よろしくお願いします」
霧山 哲太。
そーだ、間違いない。
あたしが"てった"と呼んでいた彼。
あたしの初恋の相手で、大好きだった幼なじみだ!