*Only Princess*
「あのさ、菜生……」
「なあに?」
「俺、強くなるから。菜生に頼ってばかりじゃなくて、守れるくらいに」
「ふふっ。うん、期待してるね」
菜生と交わした約束。
それを叶えてみせると心に誓っていた。
でも俺が中学に上がると同時に、親の離婚が決まった。
母さんが耐えきれなくなったみたいで。
県外の母さんの実家の近くに行くことになった。
そのことは誰にも伝えずに引っ越した。
迷ったけど、菜生にすら言わなかったんだ。
言えなかった。言いたくなかった。
きっともっと心配する、そう思ったから。
それから母さんとボロアパートで2人暮らし。
中学生だった俺はバイトもできない。
母さんは昼はパート、それ以外は内職。
一生懸命働いてくれたけど、生活はギリギリ。