*Only Princess*
出てきたのは2個下の中3の弟、翔(かける)だった。
塾に行こうとしてたのか、参考書がいっぱい入った手さげを持っている。
あたしたちに気づいた翔は、大きく目を見開いた。
「……てった兄ちゃん? てった兄ちゃんだ!」
「お、おぉ……翔か?」
「そうだよ! 久しぶりだな!」
嬉しそうな翔を見ると、まるで飼い主に駆け寄る犬を連想させる。
昔は翔も一緒にあたしたちとよく遊んでいた。
てったが転校してきたことはうちの家族全員に伝えていて、翔はずっと会いたがっていた。
なぜかあたしよりてったに懐いてる翔。
そのことに口を尖らせながらも、2人を微笑ましく見た。