*Only Princess*




今までは自分がこの世界にいようと関係なかった。


でもあの子が白鷹に入るとなれば話は違う。


白鷹と蛇王は敵対している。


だからあの子はキケンな目に遭うだろう。


なのにあの子が白鷹に入るために背中を押してしまったのは自分だ。


親友をキケンな目に晒してしまった。


なんてことをしてしまったんだろう、私。




「あの子は私の……」


「お前があいつとどういう関係だろうと、俺らには関係ねぇんだよ。そういう感情を持ち込むのはやめろ」


「でも……」



口をつぐむ女に男は近づく。


そして至近距離で視線を交じ合わせる。




「お前は俺の指示に従ってればいいんだよ。────美紗」



それだけ告げ、男はその場から去った。


その瞬間、女は膝から崩れ落ちる。


ポタポタと、冷たいコンクリートの上に涙が落ち、染み込んでいく。




「っ……ごめん、ごめんなさいっ……菜生」




その呟きは、薄気味悪い空間に溶けて消えた────。







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