シグナル
こぢんまりとした店内の片隅には、
ガラスのショーケースがあり、
中にはナイフなどの刃物が陳列されていた。
それを見た武彦は、
手で扉を開けようとするが、
鍵が掛かっている為開けられずにいる。
その様子を目撃した店主が不審に思い、
警察に電話をしている時であった。
【ガッシャーン】
武彦がフライパンを持ち、
柄の部分でガラスを割っていた。
「こらぁ、何してる!」
店主の怒鳴り声に、
この時始めて人がいた事に気付き、
襲われると思った武彦は、
すぐさまショーケースのナイフを手に取り、
店主を刺してしまった。
敵が襲って来たと勘違いした武彦は、
自己防衛の為に刺してしまったのだ。
「キャー!!!!!!」
店に買い物に来た女性客の悲鳴であった。
その客は血塗れで横たわっている店主と、
その傍らで返り血を浴びて佇んでいる武彦を見て、
腰を抜かしてしまった。
その後武彦はゆっくりと店から出ていくと、
商店街の中を歩いていく。
何処からともなく悲鳴が聞こえる。
そんな中武彦の姿を見た人々が次々と逃げて行くが、
町行く人を敵と思い込んでしまっている武彦は、
まるで無差別殺人の様に、
行き交う人々を次々と刺していく。