シグナル
そんな青木に声を掛けたのは、
もうじき定年を迎えようとする、
刑事課の安藤であった。
「どうだ彼の様子は…
何かしゃべったか?」
「あぁ安藤さん、
もう私どうしたら良いのか分からなくなってしまって…」
「なんだ!
ずいぶんと弱気な事言ってるじゃないか…
どうかしたのか?」
「それが、
あの子まだ十二歳だったんですよ…
そんな子が殺人だなんて、
こっちがどうにかしてしまいそうで…
この場合どうしたら良いんでしょう…」
「どうしたら良いと言うのは?」
「少年法では、
十四歳以下の子供には、
たとえ刑罰に触れる行為をしても、
責任能力がないとされ、
捜査をする事が認められていません!
ですから通常であれば、
保護者の方に来て頂いたら帰ってもらって良いのですが、
今回は殺人事件にまで発展してしまっています!
いくら加害者が十二歳の少年だからといって、
捜査もせずにこのまま帰してしまうという訳にはいかないのでは…」
「青木の言いたい事も分からなくはないが、
後は児童相談所の仕事だ、
彼らに任そう…
ところでもう連絡はしたんだよな…」
「いえ、そう言えばまだでした…」
「何やってるんだ!
早く連絡しないとダメだろ!
それで、
彼は今何処にいるんだ?
まだ取調室にいるのか?」
「はい、一応一人付いて貰ってますが…」
「まずくないか?それ、
彼未成年なんだろ?
少年法では大人とは区別して対応する事になってるだろ!」