シグナル

その頃坂田家では、

突然出て行った武彦がなかなか帰って来ない為、

美智代が仕事中の武雄の携帯電話に電話をかけていた。


「どうした、今仕事中だぞ!」

「どうしようあなた…

武彦が突然出て行ったきり、

まだ帰ってこないの…」

「なんだそんな事くらいで、

あいつだってもう中学生なんだから、

一人で出掛ける事位あるだろ!

そんな事くらいで電話してくるんじゃない!」

「でも今日はいつもと様子がおかしいのよ…

それに久しぶりにあの子の部屋に入ったら、

何か今までと様子が違うの、

何処がどうとはいえないけど、

何かおかしいの…」

「気のせいだろ…

仕事中なんだ切るぞ!」

「ちょっと待って!」

「何だ!忙しいんだこっちは…」

「パソコンがついてるのよ…」

「消しわすれる事くらいあるだろ!」

「そうじゃないの!

あの子パソコンでゲームをしていたみたいなの、

他にもたくさんソフトがあるわ、

こんなもの買うお金が何処にあったのかしら、

おこずかいはあまり渡してないはずなのに…」

「そんなの足らなくなったら、

参考書買うとか言ってどうとでもなるだろ!」

「でも今までゲームなんかやる様な子じゃなかったわよ!」

「今時の子がゲームにまったく興味がない方がおかしかったんじゃないのか?

もう良いだろ、今度こそ切るぞ!」

武雄はそのまま電話を切ってしまった。


しかし未だ不安を拭いきれない美智代は、

武彦の事が心配でたまらなくなり、

彼を探しに出て行こうとしていた。


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