シグナル
一方その頃井上は、
共に独立した、
後輩弁護士である田口と共に、
武彦と接見していた。
「こんにちは武彦君、
僕だよ!
井上のおじさんだ!
確か最後に会ったのは三年位前だったかな?
暫く見ない間に大きくなったな!
中学校の入学祝い受け取ってくれた?
直接渡せなくてごめんな!
おじさんちょうどあの頃忙しくてな…
どうしても時間が作れなかったんだ!
許してくれな…」
ここで井上は一呼吸おいた。
「さて本題に入ろうか…
実は今度、
君の付添人をする事になったんだ、
付添人て分かるか?
そうだな?
簡単に言えば弁護士みたいなものかな?
君みたいな少年の場合、
刑事事件とはならないんだ、
だから担当する弁護士も、
通常の様に弁護士とは言わずに、
付添人と言うんだ!」
しかし井上が話している間も、
ポツンと椅子に座ったまま、
何の反応も示さない武彦に、
【自分の事が分からないのでは…】
そう思った井上は、
まさかと思いながらも尋ねてみる事にした。