シグナル

更にその翌日、

井上が再び、

田口弁護士と共に、

武彦との面会を求めにやって来た。


「こんにちは武彦君…

調子はどうかな?元気にしてる?

また色々と質問しに来たよ、

今日こそは応えてね、

まずこの前の質問からいくね、

君が言っていたテリーって誰のこと?

何処で知り合ったのかな?」

だがこの日の武彦も、

これまで同様殆ど喋ってくれなかった。


『質問の仕方が悪いのかな?』

そう落ち込みかけた井上だが、

それでもめげずに質問を続けていく。


「次は学校での様子を聞くね、

普段学校ではどんな生活をしているのかな?

どんな友達と遊んでいるの?

どんな遊びをしているのかな?

友達とはどんな会話をしているの」

だがこの一連の質問にも、

武彦からの返事は帰ってこなかった。


この時の武彦は、

何度も逮捕された当初と同じ様な質問をされていた為、

応える気にならないでいた。


そして学校での様子については、

未だに仮想空間と意識が混同してしまっているため、

学校の様子と聞かれても、

どう応えたらいいか分からないでいた。

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