シグナル
「こんにちは!君が坂田武彦君?
私は小嶺と言います!
これから幾つか話を聞かせてくれないかな?
簡単な質問からいくよ…
まず歳は幾つ?」
小嶺医師の質問に、
怯える小さな声で応える。
「十二歳…」
「じゃぁ住所は…」
「……」
武彦からの返事が帰ってこないため、
小嶺は質問を変えてみる事にした。
「それじゃぁ質問変えるよ、
お父さんとお母さんの名前を教えてくれるかな…」
「誰?この世界にそんな人いない!」
「この世界って何だろう?
今武彦君がいる世界はどんなところか教えてくれないかな?
ここで君は何をしているの?」
この時小嶺は、
自らも武彦と同じ世界にいるかの様に、
敢えてそこではなくここと表現していた。