シグナル
第一章『期待と言う名の重圧』
「武彦ちゃん、
お夜食もってきたわよ」
ドアを開けながら言う母の言葉に、
机にかじりつきながらペンをはしらせていた手を一瞬だけ止め、
返事をする武彦。
「適当に置いといてママ…」
「じゃあここに置いておくわね…」
母親はガラステーブルの上に夜食のうどんを置くと、
すでに聞き飽きている、
いつもの言葉を口にする。
「どう…勉強はかどってる?
次こそ受かって貰わなくちゃね!
その為に高い月謝払って、
有名進学塾に通わせてあげてるんだから」
「分かってるよママ…
次こそ頑張るから心配しないで!」
「お願いね!
ママあなたに期待してるんだから…」
「はいママ…」
机に向かいながら返事をする武彦。
「じゃあ勉強頑張ってね!」
その言葉を残して母親は部屋を出ていった。
だが武彦は、
この【がんばって】
という言葉がとても嫌いであった。
【これだけ頑張っているのに、
これ以上どう頑張ればいいの?】
と思ってしまうのだ。