おとなりさん
発覚
【ハルサイド】
痛みをこらえながら立花医院にやってきた。
今すぐにでもぶっ倒れそうだ。
受付をして問診票を書く。
いや、書けない。
視界がグニャグニャして質問がぜんぜん…読みとれない。
まあいいや。もういいや。どうでもいいや。
一向に引く気配がない 頭の痛みを抱えながら、俺は待合室の長椅子で眠りについた。
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【良輔サイド】
友達とワイワイしたの、久しぶりだったな〜。楽しかったわ!
さて、帰るとしますか。
一応LINE・メール・電話が来てないか携帯をチェック。
……あれ?
いつもハルから何かしら来てるのに、今日は何も来てない。
いや、まあ、ハルも最近レポート大変そうだったし。家に帰れば隣にいるし。
…ちょっと寂しいけど。
「帰るか!」
夕暮れの空に1人でそう呟き、帰路についた。
…アパートに着いたけど、ハルの部屋の電気が点いてない。
なんでだ。考えろ俺。今日は講義が半日で終わるから帰りはお昼、なおかつバイトもないから超ラッキーって言ってた…。
なんでいないんだよ!?
あれ…??最近のハル、顔色悪かった。今日も歩くのすごいゆっくりで、話も弾まなかった。
もしかして…立花先生のとこ行ってんじゃないだろうな…!?
__________俺は立花医院に向かって走り出した。
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【ハルサイド】
「ん…。」
「お、目が覚めたかね〜。よかったよかった。村井さん、点滴外してあげて。」
おわっ!?立花の爺さんの顔がなんでこんな近くに…!?
…?あれ?俺…頭痛くて、大学から直で立花医院来て、そんで…
…思い出せない。
自分の記憶と戦っていると、村井と呼ばれた看護師が俺のもとに来た。
「宮野さん、お目覚めになってよかったです。点滴外しますね〜。」
「あ、はい。お願いします。
あの、俺…今の状況全く飲み込めてないんですけど、説明してもらってもいいですか?
大学から立花医院まで歩いて来たのは覚えてるんですけど…。」
「そうですよねぇ。大変でしたからねぇ。
待合で待ってらっしゃると思って、お呼びしたんです。そうしたらものすごく深い眠りに就いてらっしゃって。
時々顔をしかめて苦しそうでした。
問診票にはぐにゃぐにゃの文字で"あたま"って書いてあったので、頭痛かと。
すぐに立花先生に診察していただきました。」
「あぁ、そうだったんですか…。
頭がすごく痛くて、問診票の文字がグニャグニャして見えなくて。
もういいやって思って…。
ん…?あれ!?今何時ですか!?」
「え〜っと…。20:30ですよ。
閉院時間になってもお目覚めにならないので、立花先生が寝かせておいてやれって。」
「俺…何時に来ましたか…?」
恐る恐る聞く。
「14:00ぴったしでしたよ。」
終わった…。
明日までのレポートが2つあるから、午後はさっさと薬を貰って1時間くらい寝てレポート仕上げようと思ってたのに。
今20:30ってことは、明日になるまであと3時間半しかない。
無理だ。
絶望のうちに苛まれていると…。
ドンドンドン!ドンドンドン!
扉を叩く音がする。
「あの!ハル、いや…宮野晴一はいますか!?宮野晴一は!いますか!?」
え?良輔?
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【良輔サイド】
全力で立花医院まで走る。
喘息持ちだけど、そんなの関係ない。
発作が起きない程度に全力で、ハルのもとに向かう。
立花医院に着いた。
やっぱり。まだ電気ついてる。
自分でも信じられないくらいの力で、扉を叩く。
すると、看護師がドアを開けてくれた。
「あのっ!宮野晴一という男はこちらに来てますか!?」
「まあまあ、落ち着いてください。ゆっくり深呼吸して下さい。いらっしゃってますよ。こちらへ。」
よかった…。
いや、良くない!俺に体調不良を隠してここまで1人で来たなんて!
看護師に通されて、奥の部屋に入ると、そこにはベッドに寝ているハルがいた。
目は開いていて、おじいちゃん先生と笑いながら話してる。
「ハル!」
「あぁ、ごめんな。心配かけたな。ハハハ。」
そう言って、まだ顔色の悪いハルは俺に笑ってみせた。
「なんだよ、笑うなよ。なんでここにいるんだよ!」
「おいおい、落ち着けって。良輔。今からこの立花先生が説明してくれるっていうから、お前も一緒に聞くか?はは。」
「…。ごめん。分かった。聞くよ。」
「そろそろいいかのぉ?話すぞい。」
「「お願いします。」」