好きになった執事は殺し屋でした。
話しかけられ、振り向くと1人の男性が立っていた。
「こんばんは。陽菜様」
「・・・・・・柏崎様」
現れたのは、つい最近うちと取引を始めた機械メーカー大手の柏崎会社の社長、柏崎光邦さんだった。
三十歳という若さで社長に就任され、いまメキメキと業績を伸ばしている。
「・・・少し外の風を浴びたかったんです」
「そうなんですね。お風邪を召されないといいですが・・・大丈夫ですか?」
「今来たばかりですから大丈夫ですよ。ありがとうございます」
「それならよかったです。ご一緒してもよろしいですか?」
「はい」
堅実そうな見た目で、物腰が柔らかく誠実さも感じられる。
ほんとは1人でいたかったけど・・・・・・まあしょうがないか。
いい人そうだしね。
「たしかに・・・夜風が気持ち良いですね」
柏崎さんはにこりと笑った。