すれ違う未来
私がお風呂から出ると、彼もお風呂へと向かった。

彼がお風呂に入っている間に、Tシャツとスウェットを用意して、さっきの行為で汚れてしまったベッドカバーを替える。
彼の部屋から持ち帰った、お気に入りの物に・・・。

お風呂から出てきた彼は、
「あ・・・コレも、捨てないでくれてたんだ?」
ベッドカバーを見て彼は笑う。
「・・・コレも?」
「この部屋の中、俺の部屋にあったものがたくさん置いてある」
「分かるの?」
「分かるよ?」
「似たような物じゃなくて、同じ物だって分かる?」
「分かるよ。 前に雑貨屋でお前と会った時、俺は茶碗見てただろ?」
「・・・うん」
「あの茶碗だって、うちにあった物と少し違うって分かったんだ」
違う女性の為に買おうとしていると思った。
「・・・そうなの・・・どうして、あの時 茶碗を見てたの?」
「お前を想ってたよ」
彼が切なそうに笑う。
「本当に?」
「嘘なんてつかないよ。 あの店に行ったのは、このベッドカバーと同じ物が欲しかったからっていうのも本当のことだよ」
「ベッドカバーを買おうと思ったのも、私を想って?」
「常に想ってた・・・考えなくて済む様にがむしゃらに仕事したりもしたけど・・・」
彼が私の頬を撫でる。
「私は貴方を思い出し過ぎてしまうから、このベッドカバーは使えなかった」
「え?」
「使えなかったの・・・」
「そうか・・・俺は、あの日、このベッドカバーを買ったよ?」
「え・・・」
「で、一人で寂しくお前を想って眠りについてた」
彼はからかうみたいな表情で笑う。
「お前を抱いた時のことを思い出しながら」
そんな風に言葉を続けるから、私は彼の胸とトンと叩きながら睨んだ。
「でも、本物のお前をまたこの腕に抱けるなんて・・・俺、幸せだ」
抱きしめてくれた彼の腕に力が入る。
私もそっと彼の背中へ腕を回した。
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