すれ違う未来
本当は前日に上京する予定だったのだけど、私と彼の結婚の話を電話でしたから、
「それなら、早めにそっちに行って三都の婚約者って人と会わなくちゃ」
と、母は嬉しそうに言って予定より1日早く上京した。
その時の電話の時は、なんだか不満そうな父の声が聞こえ漏れていた。
兄は、母から受話器を奪い取って「三都まで俺より先に結婚するのか!? お兄ちゃん寂しいよ・・・相手の奴、イイ奴なんだろうな!?」と早口で私に訊いてきた。
「お兄ちゃん。 私が選んだ人は、とても優しくていい人だから安心して」
私がそう言うと、兄は安心した様だったけれど、
「我が家にとってのお姫様を掻っ攫うんだから、いい奴でなきゃ許せないんだ」
と、少し悔しそうな声だった。
私をお姫様と例える兄に苦笑してしまうけど、それだけ愛情をもらったと自負している。
「ありがとう。 私、お姫様ではないけど・・・良き妻 良き母になりたいって思ってるんだよ?」
「そっか、三都はただ甘やかされるだけで満足する様な子じゃなかったもんな?
家に居た時は、自分で出来ることをちゃんとしてくれてた・・・絶対 いい嫁になれるよ」
「うん。 お兄ちゃんも早くお嫁さんが来てくれるといいね?」
私が言うと、
「自分でもちょっと焦ってんだから、それを言うなって!!!」
と言われてしまった。
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