こころのやみへ ようこそ
1 自ら望んだみち

+ コワい +


 グツグツグツグツグツ......

はぁ~……。
”今日も” 無事に完了。

よかった。

あぁ、でも、まだ片付けなくちゃ。


「ぅあっっ!!」


――――― コワい・・・コワい、コワい


「声、あげるってアホらし……
 って、わたしか!」

空しい一人突っ込み。
一人暮らしだから、突っ込む人なんて
いないんだけど。
それに、一人って料理の分量が難しいから(わたしだけかな?)目の前でグツグツ煮立っているクリームシチューは、わたしだけじゃ腐らないとしたら4日間は持つ。
シチューの素が入っていた箱をみると、
一袋で12人分。
ほんと、アホらし…。
計画性がないんだよね、買い物に。
「今度買い出し来たら、
 これ買おうっと♪」
なんて決めつけて、買わなくちゃ
いられなくなる。
一人で腐る前に処理出来る範囲で
買うってことが出来ない。


後悔するのがイヤだから。


後悔への執着?
ある意味そうかも。


日に日にコワいことが多くなってる。
今もとうとう声まで出して
コワがったのは
包丁。
調理しながら片づけていたつもりが、
刃がわたしを狙うかのように上向きで
水の中に沈んでいた。
ないと思っていたものがそこにあったこと、
日増しにコワくなる包丁が刃を剥き出しに
していたこと。
不注意でこうなったわけだけど、
その........


死にたくないから。


大袈裟なんかじゃない。

手芸で使う
ハサミも
ロープも
カッターも
針でさえ

全部

全部 コワい


生きることを決めたわたし。
自身の誓いに対して、
死んでしまったら、
どんなに後悔が残るんだろう。


死へといざなう凶器たちが、
わたしを囲んでいる


それでもわたしはわたしの為に
生きて、自炊もする、バイトもする、
もう少し計画的な買い物もする、
布草履を作って両親にプレゼントする…。

10年後のわたしの為に
バイトを増やす、資金を貯めて学校へ行く。
少しずつでも目標の為に努力する。


となりにある”やみ”に恐怖しながら

わたしは生きている

いつか”やみ”に引き込まれないように
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