[完]全力恋奏~音に乗せて~
そして、私のことを優しく抱きしめた
どこか、遠慮がちに
「飯倉くん?」
「……もう振り切ったはずだったのに…」
飯倉くんは何を思ってるんだろう?
苦しそうに振り絞ってるような声が耳元で…
「まだ、好きなんだ。……俺にしなよ。」
「……え?」
「もう泣いてる姿みたくない」
飯倉くんは冗談でそんなことするような人じゃない
となると、
「本気だから」
みたいです
飯倉くんの優しさに甘えたくなってしまう
この辛さから逃げたくて、逃げようとしてしまう
けど……
「できないよ……そんな、利用するみたいなこと」
「利用されてもいい。それでもそばにいたい」
私は、その気持ちが痛いほどわかった
だから、飯倉くんを振り払うことなんてできなかった
まさか、ドアから、誰かが見ていたとしても
それに気がつかなかった……