[完]全力恋奏~音に乗せて~
「!?」
飯倉くんの方をトンっと押して、離れる
……キス…?
いや、キスはされてない……ちゃんと、私の口を塞ぐように手を置いて、その上からだった
________ジャりっ……
私のものでも、飯倉くんのものでもない足音が聞こえて、反射的に振り向く
「新村くん……」
新村くんは、傷ついた顔をしていた……驚いた顔でもあった
前を向くと、それとは裏腹に楽しそうに笑う飯倉くん
「まあ、おあいっこじゃない?」
私の耳元でそう言って、新村くんの方へ歩く
途中、思い出したかのように
「あ!あと、そろそろ俺のこと“翔亮”って呼んでよ!」
そう言った
一度新村くんの横で飯……翔亮くんが立ち止まって、新村くんの顔を見て何も言わずに去った
「新村くん」
「しず…く……」
翔亮くんは、きっと新村くんが来たことを知っていたんだ
だから、キスする振りして……
新村くんから見たら、完全にキスしてたと思う