[完]全力恋奏~音に乗せて~
「しずくーおはようー」
翌、5月9日。朝お母さんが迎えに来た
「しーずーく!大丈夫か?!」
もちろん、お兄ちゃんも
「大丈夫です!もう元気です」
お母さんが着替えを持ってきてくれたから、そのまま学校に向かうことにした
「そう言えば、あの男の子……えっと新村くん?」
お母さんの口から新村くんの名前が出てきて、驚いた
「…はい…」
「彼氏?♡」
語尾にハートがついたような言い方をするから、それにそんなこと聞くから、思わず咳き込む
「ちっ、違いますっ!新村くんは、お友達です」
「あら、そう……しずくは彼のこと好きなのね…?」
やっぱり、さすがお母さんだ。
私のことはなんでもお見通し…隠し事なんてできないよ
しようと思ったことはないけれどね
静かに頷いた
「しずく、恋ができてお母さん嬉しいわ」
「…?」
「厳しくしてしまったでしょう?しずくには。だから、今でも敬語が抜けないこと、ずっと気にしてるのよ」
「え、そうだったんですか?」
お母さんがどこか寂しそうに笑う
「もう、敬語じゃなくていいのよ?もちろん、先生とかには必要だけど、お友達にも敬語はおかしいわ」
あはは、と笑うお母さん
「お母さんたちにも敬語じゃなくていいの。なんだか、寂しくなってきちゃった」
てへ、と舌を出して笑ってみせるお母さんがかわいい…