[完]全力恋奏~音に乗せて~

私は、先輩の近くへ寄った

やっぱり、大丈夫だぁ……安心した

「あの時、守りきれなくてごめんな?」

「っ!何言ってるんですかっ……先輩は…最後の定期演奏会の全国大会へ出場出来なくなってしまって……私が謝らないといけません!」

「んなことない。…俺が中途半端に助けたから、お前は罪悪感と責任しか残らなくなった…」

「そ、そんな事ありませんっ…!中途半端なんかじゃないですっ…確かに、罪悪感でいっぱいです。けれど、あの時助けてもらえなかったら、今頃どうなっていたか……」

あの時確かに、最後まで守りきれたとは先輩からしたら言えない

けれど、先輩が逃げていたら、私は最後帰ってこられなかったかもしれない

こうして今、立ち直れていないかもしれない

「……先輩は、悪くありません……」

「園村…園村も、悪くないよな?園村こそ、悪くない…園村が俺を悪くないと言う気持ちと同じで、俺が園村に悪くないと言ってるんだ。……わかるよな?」

静かに、首を縦に頷いた。

そうだったんだ……優生先輩は、私と同じ思いで言ってくれていたんだ

「……悔しいよ。園村の心に傷を残す形になったこと。けど、あの時俺がいて良かったと思う。」

「……先輩」

「じゃなかったら、どうなってるか分かんないしな」

「本当に……ありがとうございます」

「園村…や、しずく?」

突然名前で呼ばれて、戸惑った

「は、はいっ!」

けれど、


「俺、しずくのこと困らせるよ?」



よく分からないけれど



「はい?」



なんだか、



「俺、しずくが好きだ」




心が痛い
< 78 / 246 >

この作品をシェア

pagetop