一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい
「あのさ、お父さんとみんなには悪いけど、何度も言っているように私と海斗は付き合っていないから。……跡取りとかそういうの期待しないでね」


ここぞとばかりに言葉に棘を生やし、お父さんを指差していうと、てっきり落ち込むとばかり思いきや、なぜか安心したように肩を落とした。

「そうか……ならよかった」

「え、よかった?」

いつもみんなと一緒に私と海斗が結婚して、製作所を継いでくれることを望んでいたのに?

らしくないお父さんの発言に戸惑ってしまう。

するとお父さんは、驚くべきことを言い出した。


「海斗くんと付き合っているのに、美弥にお見合いさせることになってしまって、どうしようかとヒヤヒヤしていたんだ。付き合っていないなら、本当によかった」


「…………え、なに? お父さん今、なんて言った!?」

一瞬固まってしまったけれど、とんでもないワードに声を荒げてしまう。

「だっ、だから海斗くんと付き合っていなくて安心したと……」

「その後よ!!」

遮り言うと、お父さんは怯えたように肩をすくめた。
< 10 / 334 >

この作品をシェア

pagetop