一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい
「なんでも息子さんが美弥に選んでくれたようだ」

言葉が出てこない。
なにかのドッキリではないだろうか。

ミナミ自動車からみたら、うちの製作所は下請け中の下請け。そこの娘である私とお見合いしたいなんて。

容量オーバーになってしまい、頭を抱え込んでしまう。

「美弥……お前、海斗くんと付き合っていないし、他に彼氏がいるわけではないんだよな?」

「悲しいことにそうだけど」

むしろ生まれて二十一年、誰とも付き合ったことなどない。そもそも家のことで手いっぱいで、恋愛をしている暇なんてなかったし。


するとお父さんは大きな咳払いをし、いつになく真剣な面持ちで話し出した。

「これは我が製作所の存続に関わる問題でもあるんだ。もし美弥が断ったりしたら、うちの製作所がどうなるか……お前もわかるだろ?」

思わず生唾を飲み込んでしまう。

もう子供じゃない、それくらい考えればわかる。姿勢を正し、お父さんに再度尋ねた。

「あのさお父さん、本当に間違いじゃないんだよね?」
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