一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい
材料も買ってきちゃったし、南さんのリクエスト通り、だし巻きたまごを作ってあげたいところだけれど、さすがに笹本さんがいる前で料理はできないかな。


そもそも笹本さんは、仕事で来ているんだろうし。それなのに私が料理を始めるわけにはいかないよね。


「えっと……すみません。今日はこれで失礼します。南さんによろしくお伝えください」

そう言いながら立ち上がると、笹本さんもハッとし慌てて立ち上がった。


「いいえ、本日は水谷さんとのお約束を楽しみにしておりましたので、私が失礼いたします」

「え、でも……!」


その間、笹本さんは素早くジャケットとバッグを手にし、玄関へと向かって行く。

どうしたらいいのかわからず、とりあえず私も後をついていってしまった。

ここは私が帰るべきだよね? だって笹本さん、仕事で来ていたんだよね?

けれどなんて言ったらいいのかわからず、ただハイヒールを履く姿を眺めることしかできない。


すると笹本さんは振り返り、私を見据えた。

吸い込まれそうなほど真剣な面持ちに息を呑む。
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