一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい
「実はお昼もまともに食べていないから、お腹減っていて」

「え、大丈夫ですか?」


「うん。それに夜にはミャーのご飯が食べられるかもしれないって思ったら、昼食取っている時間さえ、勿体なかったから。……仕事が終わったタイミングでミャーがこうして来てくれてよかったよ」

「あ……」

違うんだけどな。私、けっこう前から来ていたんだけど……。

「こっちだよ」とリビングへ向かってしまった南さんに、言うタイミングを逃がしてしまった。


とりあえず南さんの後を追ってリビングに入ると、彼はテーブルに並べられていたカップふたつを、不思議そうに眺めていた。


「あれ……僕、紅茶なんて飲んだっけ? しかも二杯も?」

記憶になくて当たり前なのに、首を傾げる南さんに慌てて声を上げた。


「すみません、それはその……南さんが仕事中に笹本さんが淹れてくれたものでして」

しどろもどろになりながらも説明すると、南さんは驚き目を見開いた。

「え、ミャーもしかしてけっこう前から来てくれていたの?」

「……はい、すみません」


すぐに言えなかったことが後ろめたくて謝ってしまうと、南さんはすぐに「どうして謝るの?」と言ってきた。
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