一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい
「えっと、それじゃキッチン借りて作りますね」
気まずくて、リビングが見渡せるオープンキッチンへ逃げ込んだというのに、南さんもキッチンへやって来た。
「ミャー、キッチン用品とかどこにあるかわかる?」
「……っ! だっ、大丈夫です! なんとかやりますから! 南さんはどうぞお気になさらずお仕事でもしていてください」
追い出すように彼の背中をグイグイ押していくと、なぜか南さんはクスクスと笑い出したものだから、彼の背中を押す手の力が弱まってしまう。
立ち止まってしまうと、南さんは口元に手を当てながら振り返り私を見下ろした。
「ごめんね、笑ったりして。……なんか、こういうのいいなって思って。まるで新婚さんみたい」
「なっ……!」
“新婚さん”というワードに過剰に反応してしまい、声を荒げてしまうとますます南さんは可笑しそうに笑うばかり。
「じゃあお言葉に甘えて、溜まっている雑誌や新聞読んでいてもいいかな?」
「……もちろんです」
「なにかあったら声掛けてね」
自然と私の頭を優しく触れる大きな手。
たったそれだけのことで、心臓が大きく飛び跳ねてしまった。
気まずくて、リビングが見渡せるオープンキッチンへ逃げ込んだというのに、南さんもキッチンへやって来た。
「ミャー、キッチン用品とかどこにあるかわかる?」
「……っ! だっ、大丈夫です! なんとかやりますから! 南さんはどうぞお気になさらずお仕事でもしていてください」
追い出すように彼の背中をグイグイ押していくと、なぜか南さんはクスクスと笑い出したものだから、彼の背中を押す手の力が弱まってしまう。
立ち止まってしまうと、南さんは口元に手を当てながら振り返り私を見下ろした。
「ごめんね、笑ったりして。……なんか、こういうのいいなって思って。まるで新婚さんみたい」
「なっ……!」
“新婚さん”というワードに過剰に反応してしまい、声を荒げてしまうとますます南さんは可笑しそうに笑うばかり。
「じゃあお言葉に甘えて、溜まっている雑誌や新聞読んでいてもいいかな?」
「……もちろんです」
「なにかあったら声掛けてね」
自然と私の頭を優しく触れる大きな手。
たったそれだけのことで、心臓が大きく飛び跳ねてしまった。