一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい
だめだ、一度落ち着かないと料理なんてできない。

「わかりました」と伝え、くるりと背を向けキッチンへ戻っていく。

そして食材をエコバッグから取り出しながら、何度も深呼吸をしては胸の高鳴りを必死に鎮めた。

南さんに会えば、自分の気持ちがはっきりすると思っていた。

なのに笹本さんに言われて自分の気持ちに気づいて。……そして実際に彼に会うと、思い知らされてしまった。


南さんと一緒にいるとドキドキしてしまう。頭に触れられただけで心臓が飛び跳ねて。……これはもう間違いない。


私、南さんのことが好きなんだ。


好きだから笹本さんに言われて悔しくて、彼女の気持ちを聞いて動揺してしまったんだ。

ハッキリと自覚してしまうと、堪らなく恥ずかしい気持ちでいっぱいになってしまう。


とっ、とにかく料理を作らないと! 作って今日のところはさっさと退散しよう。「仕事の邪魔をしたら悪いから」とか、適当に理由をつけて。


そう思っていたんだけど……。
< 171 / 334 >

この作品をシェア

pagetop