一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい
南さんは通常運転。でも私は違う。全然平常運転ではいられない。


自分の気持ちに気づいてしまったから。だからこそ、モヤモヤが増していく。彼の私に対する態度が変わらないから。


それはつまり、南さんは私のこと……恋愛対象として見ていないと思っちゃうから。

深くソファに腰掛け、家にあるテレビとは比べものにならない程大きなテレビを眺めた。

流れているのは音楽番組。切ないバラード調の曲が耳に届いてくる。

これ、今話題の失恋ソングだったよね。

ちょっと今の私にぴったりな曲じゃない?


私は南さんのことが好き。南さんも私のことを好きだって言ってくれているけれど、きっと彼の“好き”って気持ちは、私と同じじゃないはず。


第一、私とお見合いしたいと思ったきっかけが、亡くなった愛犬と似ているからだよ? それに南さん、笹本さんも言っていたけど、今まで恋愛に興味なかったみたいだし。


そんな彼が本当に好きって気持ちを理解しているとは、正直思えない。


……それにきっと彼は、幼い頃から笹本さんが自分を想ってくれているなんて、気づいていないんでしょ?
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