一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい
頭に浮かんでしまうのは、いつもの我が社の様子。十時と十五時にはみんなで仲良く休憩を取って、常に笑いが絶えない。


それがずっと当たり前に思っていたけれど、本当は違うのかもしれない。

私もお父さんも、社員のみんなに恵まれているのかもしれないね。

ズキズキと痛む胸を押さえながら、彼に尋ねた。

「でも信用できる人もいるんですよね?」


少なくなっている、とは言っていたけれど、誰ひとりいないとは言っていないもの。それに、会社で誰も信用できる人がいないなんて、辛いことだから。


希望を込めて彼を見つめてしまうと、南さんは私を見据え少しだけ口元を緩ませた。

「ミャーは優しいね。……僕のこと、心配してくれているんでしょ?」

「――え、わっ!?」


次の瞬間、彼がゆっくりと私の肩に頭を乗せ、体重を預けてきたものだから、思わず色気のない声を出してしまった。


なっ、なに!? どうして急に!?

肩に感じる彼のぬくもりと、時折頬に触れる彼の髪がくすぐったくて、微動だにできなくなる。
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