一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい
話さないことにはなにも伝わらないし、今のギクシャクしたままの関係が続くだけだよね。

最後に私の頭にポンと触れると、海斗は作業帽子を被った。

「え、海斗帰らないの?」

私も立ち上がり聞くと、海斗は「あぁ」と言いながらドアの方へと歩き出したから、私もついていく。


「昨日も一昨日も用事があるって言って、先輩たちより早く上がらせてもらっちまったからな。今日は最後まで社長に付き合うつもり。それに納品日は明後日だしさ」

ドアの前で立ち止まると、海斗はニッと笑い白い歯を覗かせた。


「美弥の握ったおかかのおにぎりが食べたいから、作って差し入れしてくれよ。社長もなにか食べたほうがいいだろ?」

「うん、わかったよ。すぐ持っていく。……ありがとう、頑張って」

すると海斗は帽子を深く被り直し、「よろしくな」と言い事務所を後にした。

おかかとあと、お父さんが大好きな梅干しのおにぎりを沢山作っていこう。

それと夜は冷えるから温かいスープも一緒に。

事務所の戸締りを済ませ一度自宅に戻り、おにぎりやスープを持って作業所へと向かった。
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