一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい
「やった、終わった……!」

「どうにかなったな」

「あぁ、一時はどうなるかと思ったけどな」

金曜日の午後十六時。

納品時間ギリギリに注文分の部品を作り終え、つい先ほど配送業者に引き渡したところだ。


「みんなお疲れ。ありがとう! ……本当にありがとう」

作業所で喜びを分かち合うみんなに、お父さんは感極まった声でお礼の言葉を繰り返した。

そんなお父さんにみんなは顔を見合わせ、次々と声を上げた。

「なに言ってるんですか、一番頑張ってくれたのは社長じゃないですか」

「そうですよ、休日も返上して……。明日と明後日はしっかり休んでくださいよ」

「頑張って倒れてぽっくり逝っちまったら笑えませんよ?」

最後に森さんが冗談交じりに言うと、一気に作業所は笑いに包まれる。


少し離れた場所からみんなの様子を眺めていると、いつの間にか海斗が隣にやって来た。

「間に合ってよかったな」

「……うん。海斗もお疲れさま」

本当にどうなることかと思ったけど、間に合ってよかった。

すると海斗はみんなに聞こえないよう、私の耳元に顔を近づけそっと囁いた。
< 285 / 334 >

この作品をシェア

pagetop