一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい
受話器を置き駆け寄ると、南さんはお父さんの呼吸や脈拍、胸元に耳を寄せて心臓の動きなどを確認していた。

「よかった。倒れたとき、頭を打ったかわかる？」

お父さんが倒れた時、私は給湯室にいて見ていない。

「いいえ」

「そうか。頭を打っていたら大変だし、救急隊が来るまで動かさない方がいい」

「頭……」


そうだよね、倒れたとき頭を打ってたら……。

考えれば考えるほどまた怖くなり、その場に膝から崩れ落ちてしまった。


「ミャー、大丈夫だから」

すかさず南さんは駆け寄り、震える私の身体を包み込んだ。

「脈も乱れていないし、呼吸もしっかりしている。……大丈夫」

「南さん……でも……っ」

「僕がついているから」

恐怖で埋め尽くされている私を宥めるように、彼の手が紙や背中に優しく触れた。


突然倒れてしまったお父さんが心配で、不安でいっぱい。でも南さんがそばにいてくれる。それだけで気持ちが少しずつ落ち着きを取り戻していく。
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