一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい
思いの外南さんの手が冷たくて、一瞬瞼を閉じてしまう。

すぐに開けた時、視界に飛び込んできたのは目を赤くさせた南さんだった。


「僕が色々考えているように、ミャーもきっと考えているはず。僕とこの先一緒にいられるか、不安でしょ?」

なにもかも見透かされたような目で見つめられると、なにも言えなくなる。

けれどこれでは肯定しているのと同じようなもの。

それに気づいた南さんは眉尻を下げ、少しだけ口元を緩ませた。


「ミャー、そんな顔しないで。ミャーが思っていることは当たり前な感情だから」

切なげに言うと、彼の手がゆっくりと離れていく。そして大きく揺らした瞳を私に向けてきた。


「ミャー……プロポーズ、取り消させてもらってもいいかな? 今の僕にはミャーに結婚を申し込む資格もないから」

南さん……。

「傷つけてごめんね。……辛い思いをさせてごめん」

再び頭を下げる南さん。

なにか言わないと。わかっているのに声が出ない。

顔を上げた南さんと再び目が合っても、ただ見つめ返すばかり。
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