一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい
「それに言っちゃったものは仕方ない」

考えることを放棄し、楽観的に考える。


だって今さら戻って、さっきのは違いますなんて言えないし。……なにより、あんな人と交際が始まっちゃったりしたら……? 考えただけでゾッとする! 向こうは私を愛犬代わりだって思っちゃっているような人なんだよ!?


そんな人と恋愛なんてできるはずない。お父さんだって話せばわかってくれるはず。

それに可愛げのないこと言って帰ってきちゃったし。

溺愛していたミャーとは違うって気づいて、彼の気持ちも冷めたはず。

自分の都合のいいように考えながら、バス停に向かっていく。


「あと五分、か」

時刻表でバスの到着時間を確認したあと、ふともう一度ホテルを見上げてしまった。


本当、いい経験になったよね。あんな豪華な料理を食べられて、素敵な服やバッグ一式用意してもらえて。

あ、そういえばこの洋服、彼が選んでくれたって言っていたよね?
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