一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい
淡いピンクのシフォンワンピースと、ヒールの高くないサンダル。

上品なレースがあしらわれたクラッチバッグ。

正直自分のドストライクばかりで、なんてセンスのいい人なんだろうって思った。


「お礼、言いそびれちゃったな」

お父さんが返事をしたときに、お礼を言ってもらったけれど、直接は伝えていない。

それだけは後悔してしまうけれど、もう二度と会うことがない人。

ううん、会うことが叶わない人だ。

身分差がありすぎるもの。

そう思うと、やっぱりさっきまで夢の世界にいたような錯覚に陥りながら、到着したバスに乗り込むと、身体の力が抜けてしまった。

一応ちゃんとお見合いはしたわけだし、きっと向こうからも断ってくるはず。

このまま日常の生活に戻るだけだ。

そう思うとホッとしてしまう。

そのままバスで最寄り駅へと向かい、電車を乗り継いで家路に着いた。


明日からまた仕事を頑張ろうって気持ちを改めて。
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