一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい
別に私が振られたわけではないのに、さも私が振られた体で言ってくるから、たまったものじゃない。

けれど私もお父さんじゃないけれど安心した。

私の態度に彼が怒って、契約打ち切りだなんて言われたら、本気でどうしようかと考えてしまっていたから。

それこそお父さんじゃないけれど、みんなへの退職金とか、これからの生活とか、色々と。

その心配も今後はしなくても大丈夫そうだと思うと、ホッとしてしまう。


椅子の背もたれに寄りかかりながら考え事をしている間に、パソコンの画面は真っ黒になっていて、自分の姿が映し出された。


今日はいつもにも増して髪がまとまらず、耳の下で二本に結んでいるんだけど……。

まじまじと自分の姿を眺めてしまう。

「トイプードル……か」


まさかのお見合いの決め手がトイプードルに似ているからだなんて、少なからずショックだった。

マウスを動かし、ネット検索で“トイプードル”と打ち込むと、たくさんの愛らしいトイプードルの画像が出てきた。
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